武蔵境・聖徳学園「シネマ・アクティブ・ラーニング」第4週〜第6週
聖徳学園中学校で全10週にわたって担当させて頂いております
ICT×アクティブ・ラーニング×映画
「シネマ・アクティブ・ラーニング」いよいよiPadを用いた
制作実現力ワークショップに入りました。
今回、大変貴重に感じておりますことは、
中学1年生に向けて、映画制作の各段階を踏むことで
社会人基礎力・コミュニケーション能力をバランス良く向上させられることを
小生以外の先生方も含めて、体感し、実感をしていただける機会を授かったことです。
ご尽力頂いております伊藤校長先生、横濱先生、鶴岡先生に心より感謝致したく思います。
今回始めて中学一年生という対象と向き合っておりますが、
大切なことは、「こと細かく指示を出してあげること」だと思っております。
高校生以上であれば、「物を置いてください」「集まってください」
という内容でも自主的に判断をして行動をすると思いますが、
子供たちは、まず「どこに置くの?」「なんで集まるの?」
という思考が働くようです。
そこで、「壁際の下に紙を置いてください」
「これからボールでゲームをするから等間隔にお隣と離れて集まってください」
など細かく指示をするように心がけるようになりました。
これは、当社における若いスタッフにも行っていることで、
自分の感覚では分かるだろうが、通じない時には、
相手の目線に立ってあげられる心のゆとりが大切だなと感じております。
【第4週:制作実現力(実写映像制作)】
前回のブログ、同様、各クラスの雰囲気・様子を踏まえて
お話ししていきたいと思います。
本校は、1組、2組、3組ですが、あえてA組、B組、C組と表現させて頂きます。
それぞれのクラスの特徴は、
A組:クラスの全体で仲良く、ちゃんと相手の意見を聴けるクラス
B組:学力が高く、個々の考える力が長けているクラス
C組:表現する力に長けていて、チームの連携というよりも思った感情をぶつけるクラス
この週は、iPadを使って1分のショートフィルムを完成してもらいました。
50分という授業の中でどこまでできるのかが、
難しいかなというのが最初の予想でした。
最初の10分はガイダンスと今までのおさらい
その後の5分は物語発見力ワークで行った三幕構成理論を使ったストーリー制作
そこから25分で撮影に行ってもらい、最後の10分で鑑賞会という流れに致しました。
テーアは「友達」に致しました。
今回はチーム分けを行ったのですが、時間も限られていることもあり、
2分の中でチーム分けできたらOK。
できなければ、先生がランダムで決まるという方法を取りました。
B組は、個々の学力が高いものの、チームで素早く集まるなどが苦手なクラス。
このクラスでは、時間に間に合わず先生が決めることとなりましたが、
チーム力の高いA組では、「ここは多いから、そっちのチームに移動」
などと声を掛け合いながら
連携をしていた姿がとても素晴らしかったと思います。
チーム分けが終わり、5分間という短かい時間で物語を作ってもらったのですが、
みなさん、前々回学んだことをしっかりと学んでくださっており、
短時間で上手にストーリーを組み立てていたと思います。
5グループ5、6名に分けて実習を行いました。
3種類の動画を撮影してきてもらうのですが、
監督として指示を出したり、キャメラマンになって構図をこだわったり、
俳優として演技に専念したりと個性が大変よく出ていて、
どのクラスも大盛り上がりでした。
その中の特徴としては、
A組は役割分担の段階で、誰がどれをやるかをこだわったり
B組は何度もテスト撮影を行ってこだわったり
していてなかなか時間内に収まりませんでしたが、
C組はこちらが想像していた以上にチームで連携をとりながら、
撮影中もこうしよう、ああしようと組み立てて
時間内に面白い映像を完成させました。
あるクラスでは、ジャンプカットを使ったり、
真っ暗にして声だけを当てたり、
チャイムの音を探してきたりと、
様々な創意工夫をされているチームが多々あり、
こちらも目を丸くしておりました。
先生方も大盛り上がりで、学生さんに混じって
作品作りに参加されている様子はなんとも微笑ましい光景でした。
女性の大人しめな先生が、とても張り切って
「時間がないわ」などと声を学生さんにかけている姿も拝見し、
教師と学生が共に物を作ることで関係性がより深くつながれることを実感致しました。
そして、発表タイム。
短時間で名演技を表現していると共に、
何より驚いたのは、編集ソフトを使わずに、ロイロノートを学生さんたちが
自分で考えて、映像の編集ソフトとして活用されていたことです。
iMovieを教えていないので、1カットずつ
バラバラで投影させるかと思いきや、自分たちでアプリを工夫していたところは
大変驚きました。
また、本学はApple TVが完備されているため、
ワイヤレスで即時的なiPadの発表ができたことも大きかったです。
【第5週:制作実現力(クレイアニメ)】
この週は、ストップモーションスタジオというアプリを使って、
クレイアニメを作ってもらいました。
チェコのヤンシュヴァンクマイエルや小生が2年前に行った小学生の
ワークショップで見事映画祭でグランプリを獲った作品などを紹介して、
クレイアニメの世界観の面白さをチームで体感していただきました。
テーマは「落し物」にしましたが、みなさん様々な落し物の物語を
作れたみたいです。
クラスによっては、時間内に何を作るかを先に決めると
作業が進みやすいクラスもあり、
撮影よりも創作に力を入れるクラスや、立体的に作っているチームなど
様々でしたが、時間内に撮影できなかったり、うまく造形ができなかった
失敗も彼らにとってはとても大切な経験なんだろうなと思いました。
一コマ一コマを撮影して映像に仕立てるわけですが、
粘土造形に夢中になる子もいれば、機材のセッティングに関心のある子、
様々で、粘土を作らない子は撮影の準備しましょう、というように
それぞれが分担をしながら、時間内に作業をさせてあげることも
大変有益なワークに思えました。
この週では、A組とB組がよくできていたように感じます。
C組は、粘土の造形とアニメーション、それを撮影していくという
細かい一つ一つの作業がまだ苦手のようで、
その点、A組はお互いの得手不得手を双方で見ながら連携を取っており、
B組は完成系に向けて作業をしっかりとこなしておりました。
作品の完成度としては、B組がやはりストーリーとしては
しっかりしていたかなという印象です。
【第6週:制作実現力(プログラミング)】
この週は、Scratch.Jrというアプリを使ってショートフィルムを作ってもらいました。
久々に個人でのワークで1クラス約30名の学生さんたちが個々の想像力を働かせて
映画を作ってもらいました。
お題は「探す」に致しました。
アプリに入っている背景画像やキャラクターを用いて
ストーリーを作ってもらいます。
その上で、キャラクターを動かす指示をアイコンでつなげていき、
飛んだり、走ったり、回転したりしながら、
物語を組み立ててもらいました。
最後のオチまでしっかりとできている方もいれば
ストーリーの起伏がつけられなかった方など、
まちまちでしたが、与えられた素材の中をどのように調理をするか、
アニメーションにこだわる人もいれば、
キャラクターの造形に凝る人もいたりして、
多種多様の作品が生まれ、大変面白い回となりました。
プログラミングも、同じ「命令」を連続させている学生が多くいて、
例えば右に10コマ動くを、右に1コマ動く命令を10回させていたりしていたので、
如何にシンプルに命令をさせるかを一人一人回りながら伝えていきました。
斜めに動かすにはどうするの?
跳ねさせるにはどうするの?
消えるにはどうするの?
と言ったたくさんの疑問が出てくるので、
答えをすぐに伝えるのではなく、
斜めって何と何を同時に命令すると斜めになるかな?
とヒントを与えながら、考えさせる練習をさせております。
この授業では、点数を付ける評価はないため、
毎週、毎週、教師同士で授業前後で打ち合わせをして、
各学生、各クラスがどのように変化、成長を遂げたかを大切してく
構成を組み立てております。
4週〜6週にわたり、実習を進めることで、
1週〜3週で分かれていた評価がだいぶ変わってまいりました。
プログラミングは、学力の高いB組が映画的に面白い作品を作っておりましたが、
チームで力を合わせるワークだと、
A組やC組がオリジナリティ溢れる作品を生み出していたことに驚きを覚えました。
ここで改めて気づいたことは、チームで力を合わせた時に、
不得手だと思われていた能力が自然と引き伸ばされるということです。
ここにアクティブラーニングの定義となっている
「主体的で対話的な深い学び」が含まれていると感じるわけです。
主体的=自ら参加し、自分ごととしてプロジェクトを推進させる力
対話的=相手の良さ、不得手を認め、補い合う助け合い精神
深い学び=答えが一つに決まらない問いの中、自分なりの解釈で見解を導いていく姿勢
だと思うわけです。
物事を完成させるのが苦手だろうと思っていたクラスが
チームワークと体験を織り交ぜることで、
論理力、理解力、構成力が断然伸びていったことが、大きな気づきであり、
教える側の喜びでもありました。
チームとしてまとまりがなかったクラスが、
大変素晴らしいチーム力を発揮したり、役割をそれぞれが分担をすることで、
双方で助け合いの精神が生まれてきました。
ちょうど先週に中野のNAS番外編で「ワークショップの進め方」
セミナーに登壇した際に、一緒に登壇した
ワークショップデザイナーの小笠原祐司さんが紹介されていた
「場作り、プログラム、ファシリテーションの学び方」
で使われていた図を応用しますと、
「主体的かつ創造的な学びの生み出し方」はこんな風に
【INPUT】【体験】【実践】【振り返り】
をうまく相互でミックスしてあげる発想が大切だと思っております。