皆さん、こんにちは。
しとしと雨降りのお天気が続きますね。
お天道様が恋しいですが、雨は恵みの雨。
人間もそうですが、水に大部分を支えらているものです。
雨の恵みに感謝をする時間が、梅雨なのかもしれませんね。
さて、一昨日の七月七日は何の日だったか分かりますか。
そう、七夕! でありながら、小生の一大決心をした日でもありました。
「ノー・ヴォイス」に続く次回長編映画としまして
「あまのがわ」というタイトルの映画を制作します!
本作は、おいらの出身の早稲田大学理工学部、現役大学生の吉藤健太朗さん
(通称:オリィさん)の開発された分身ロボット「OriHime」を題材にしております。
出会いは去年の晩夏。
弊社にロボットを共同で開発したいという企業様がお見えになられ、
映画監督が監修するロボット制作をしたいということがそもそもの発端でした。
ロボット?? おいらに???
私の関心ごとに「ロボット」という単語は、全くありませんでした。
小さい頃からガンダムとかコテコテしたの好きではなかったし、
そもそもおいらは、理系だけど、物理は大の苦手だし、
機械やシステム作りすら苦手なんだよなー、という気持ちでした。
依頼主からの説明では、おいらが担当するのは
ロボットのシナリオや表情といったソフト面での監修でした。
なるほど! それならばと思い直しました。
というのも、おいらがいつもワークショップで行っていることは、
演技レッスンや身体ワークを用いたコミュニケーション能力の育成だからです。
いつもワークショップで使っているノウハウや様々な情報をお伝えしながら、
それらがロボットが生み出す仕草にも有益であろう仮説を立てながら、
やり取りが進んでいきました。
そして、実際の製品と向き合いお仕事をさせていただくことになったのですが、
昨年のおいらの気持ちとしては、ロボットのことを全く知らないとまずいよな
という想いから、徹底的にロボット市場、現状をリサーチしました。
パワードスーツから玩具としてのロボット、様々な役割があることに、
驚きと興味を持ちながら、勉強していきました。
そんな中、面白いロボットを作っている早大生がいるよ、
と教えてもらったのが、OriHimeと吉藤オリィさんでした。
善は急げということで、多忙なオリィさんのスケジュールをなんとかゲットして、
三鷹の彼のオフィスに仲間と共に訪れました。
そこでの出会い、彼から聞く見地は、
今までの自分の人生の中で蓄えてきた、大切なものばかりをお話されてました。
何より、彼の辿った背景と自身の背景があまりにも近しく感じられ、
環境や世代は違えども、こんなにも世の王道から外れることを誇りに思い、
我が道を切り開こうとする姿勢や発想を持った人がいるんだなと、
共感と共に、頭が下がる想いでオリィさんと会話をしておりました。
傍観していたスタッフいわく、おいらとオリィさんとの会話は、
まるでトークイベントを聴いているみたいで、
このやり取りを誰かに聴かせたいと常々、感想を漏らしております。
そんなオリィさんとの初回の出会いから、
実は映画にしたらいいよな! と瞬間思いついたのでした。
初めて会っていきなり映画を創りませんかっていうのもないよなと、
帰りがけ、ちょっと恥じらいながら、
「映画にしませんか?」とさりげなく言葉にしたのを今でも覚えております。
おいらがそう思ったのは、まずOriHimeのコンセプトに共感、感銘を受けたからです。
オリィさんの成長歴に、不登校やいじめがあり、
体が弱いながらも社会との接点を探ろうとした姿勢、
そして、折り紙の達人、パントマイムやファイヤーパフォーマンスの芸をお持ちで
それら芸能の要素が、OriHimeにパーツとしてこめらていることです。
中でも特徴的なOtiHimeの顔は、古くは能面の発想から来ているそうです。
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Photo by (c) Tomo.Yun |
古典芸能が大好きなおいらにとって、
顔の表情は能面から由来していると言われただけで、
彼は本当にいろんなことを勉強しているなと関心させられました。
ご存知な方がいるかと思いますが、能面は喜怒哀楽の中間の表情として、
観る側の感情によってその表情が違って見えるお面です。
面を付けた者の仕草や素振りによって、能面は表情を変化させます。
あえて、細かい表情をつけず、能面をロボットの顔に採用する発想は、
彼が奈良という古都出身だからでしょうか。
古いものと新しいものを見事に融合させている技術に、
素晴らしいとしか言い様がありませんでした。
他にも語れば語り尽くせないので、オリィさんの講演会があったら、
是非聴いてみてください。
きっと目からウロコのお話ばかりですよ。
そんなおいらの人生にとって、稲妻を落とすような出会いから、
ロボットのことを、
過去は鉄人28号やアトムからAIBO、PEPPER、ロビーJr.など
様々なロボットを調べまくりました。
当初はこのテーマならやっぱり、ドキュメンタリー映画だよなと、
その流れで企画書を書き、監督も自分ではなくうちのスタッフだよなと
書いていたのですが、なかなか思うように行動を起こせずにおりました。
なんでだろう? と。
で、OriHimeロボットを遠隔操作で使っているエースパイロットの番田雄太君と出会い、
ロボットのことと共に、
身体が極度に不自由な人の存在ということにも着目をするようにいなりました。
ちょうど氷水のバケツリレーチャレンジが流行り、昨年はALSという言葉が
世に認知され始めた年でもありましたよね。
番田くんの20年間孤独と闘った今までと、OriHimeと出会ってからの数年の生活の変化、
社会との結びつきの変化、出会いや笑顔が増えたことなど、
彼とやり取りする中で、
OriHimeがこんなにも一人の人間の人生にプラスを運ぶことができるんだ、
という驚きでいっぱいでした。
そもそも、おいらの前作「ノー・ヴォイス」を手がける時も、
犬猫に関しての強い関心があるわけでもない中、
リサーチを重ねていって気づいたことが、命は支え合いながら共存しているものであり、
互いに尊敬や感謝をしていき、育んでいくものであること。
ですが、全身が動けない人にとっては、
一見するとそもそも他者との関わりを持つことができないんじゃないかな、
自分には想像をもできない辛さや悩みを抱えているのだろうという気持ちでした。
そんな苦しみをOriHimeの存在が救ってくれることを番田くんが教えてくれました。
そして、次世代の人と人との繋がりにロボットが不可欠になった時代が
やってきたんだな、と思ったのです。
オリィさんがOriHimeに込めた想いは、「孤独や不安の解消」--。
彼の半生の中でご自身が体感してきた負の気持ちを克服したい、
これを生かして世の中に貢献したいという想いが
こうして形になっていたわけです。
そうした彼らの活躍を垣間見ながら、
拙作「ノー・ヴォイス」の上映会が全国で続いており、
犬や猫を大切にする気持ちと共に、
ロボットが生み出すコミュニケーションの可能性が、
現代社会に求められいると感じたのです。
被災地では、愛犬、愛猫と離れ離れになりながら、
仮説住宅で暮らしている方が多数おります。
被災地のみならず、ご高齢で一人暮らし、
無菌室にいなければいけないお子さんなど沢山いらっしゃる訳です。
そんな方々が、一人ぼっちの寂しさの解消として、
ロボットを通じて、家族や社会と接点を持つことは、
人の生き方の原点を問いかけていると感じてやみません。
これからロボットの存在意義が、
ますます社会に浸透し、話題や課題として取り上げられる訳だから、
そんな将来のことを探っていく作品を作る意味が、今この瞬間にあるんじゃないかな。
であるならば、きっとおいらがやれることは、
ドキュメンタリーではなく「フィクションだ!」
そう思った訳です。
既にオリィさんの周りには様々なメディアが連日押しかけ、
報道やドキュメンタリー番組として放映が行われております。
であれば、なおさら、今誰もやっていないこと、
自分の強みであるフィクションの物語から
現在のOriHimeの役割と将来の社会に於けるOriHimeの関わり方を
映し出せる作品を世に送り出せたら、
このOriHimeを必要とする人、まだOriHimeのことを知らない人に
分かりやすく、親しみを持って生活の一部として使ってもらえるのでは、
そう考えるようになったのでした。
実はもう一つのきっかけは、映画「ベイマックス」。
これが公開された当時は、
なんだ、既に自分のやりたいことをディズニーが手掛けてるじゃん、
と思いながら、予告編を観て、劇場に足を運びました。
で見終わって、「え?」と驚いたのも、この作品を創る動機の一つでした。
作品としては素晴らしいですし、展開も面白いですが、
予告編から想像していたおいらのベイマックスは、
人の心の支えとなるロボットの役割をどのように描けているかでした。
ですが、米国では当初からこの映画をアメコミのヒーロー物として出発させており、
おいらのイメージしていたヒューマンの部分を丁寧に描く作品とは
180度違ったアクションとヒーローが主体の内容だった訳です。
そんな劇場でのガッカリした気持ちから、
日本人として映画を通じて、このOriHimeの良さを世界に発信することは、
ロボットと人間とが如何に共存していくかを模索していくきっかけになりうると
思えたからです。
そんなモヤモヤとした気持ちを抱えながら、昨年から半年間、
いろんなことを妄想しながら、5月末にこの作品を創ろう! と決意したわけです。
そこからというもの、身近な方々にOriHimeの説明と本作の説明に動き回り、
ご理解や賛同、貴重なご意見を得ながら、コアスタッフが固まったのがつい最近。
その間も夜な夜なあらすじ制作を連日しておりましたが、
こちらも一ヶ月半向き合ってようやく自信を持ってお届けできるストーリーを
書き上げることができました。
そして、一昨日、OriHimeのレンタル開始の日と共に、本映画制作の発表をさせて頂いた訳です。
まだまだ、綴りたい想いは沢山ありますが、次の機会に書きたいと思います。
今この作品を手がけることになったのも、
今まで感じてきたこと、出会ってきた人、
今自分を支えてくれている人、ご縁がなく別れていった人、
「ノー・ヴォイス」や短編映画を通じてお客さんから得た気持ち、
制作者として学んだもの、
現時点でのあらゆるものの集大成のような作品が「あまのがわ」だと思っております。